2014-04-24から1日間の記事一覧

いちまいの鋸置けば雪がふる  五千石

上田五千石 春陽堂俳句文庫より 滋賀県の八日市でのこと。職人の置いた鋸の上に、降ってきた雪がひとひらひとひらと溶けていくのを、じっと見ていたことがあった。鋸の方が、雪よりも温かかったのだ。

みづうみを抱へて雪の大津かな  柑児

浜中柑児 ホトトギス雑詠選集より 大津に泊まった夜、日本酒を飲んだ。 あの夜のように、日本酒は静かに飲みたい。

外套の裏は緋なりき明治の雪  青邨

山口青邨 青邨俳句365日より 句会後のお茶の席でのこと。松村武雄さんと私が青邨のこの句の話をしていると、隣の席から登四郎先生が、それ、誰の句?

雪の日暮れはいくたびも読む文のごとし  龍太

飯田龍太 春陽堂俳句文庫より 「そんなことを言ったって、あなた、私だっていつかは死ぬわ。その時だって、女よ」

葱ノート括るや学生妻とことこ  楸邨

加藤楸邨 蝸牛俳句文庫より 時代、という言葉は、ある世代を括ろうとする。 しかし、実際のところ、そうせざるを得ないのだ。 ※ この句に 2000/1/3 に付したメモを二つ ■ 昭和37年作。当時の楸邨は青山学院女子短大国文科教授。この学生妻は計算上戦中生まれ…

山深く輪飾のある泉かな  登四郎

能村登四郎 句集『芒種』より 見続けて見飽きないものが三つある。 打ち寄せる波、降り続ける雪、泉の湧き出る処。

元日や手を洗ひをる夕ごころ  龍之介

芥川龍之介 句集『夕ごころ』より 「かげ」と読ませる文字には「影」や「陰」の他に、「光」もある。 しかし、「闇」に「かげ」はなく、強い光自体にも「かげ」はない。

そしてこの大年の夕霞かな  鮎太

渡辺鮎太 句集『鮎』より 仮に、昨日のことであろうとも、 遠い昔は、遠い昔なのでした。